ばくだん凛ちゃん
一時保育といっても生駒医院の母体が運営している保育園。
全く知らないわけではないし、認定こども園なので幼稚園に近い教育もするそうで。
いずれ入れるならここかなあなんて、何となく思っていた。

でもね。
それは私の感覚で透はどう考えているんだろう。
私立の有名幼稚園とか考えていたら…。

その後の小学校、中学校、高校。

大学は?

そういう事を全く話し合っていない、私達。

それ以前にこの一時保育も話し合っていないし。

思わず溜め息をついた。

医師の妻って私みたいな者には無理なんじゃないかと今更ながら思う。

普通なら奥さんが子供の全てを管理するんだろうけど。
お義母さんに聞くのもね…。
透が万が一、聞いた事を知ったら怒り狂いそうだから聞けない。
透に聞いた所で絶対にまともな回答なんてくれない。



とはいえ、一度は聞いてみないとね。



「透」

その日は紺野に戻らなくて良いので私達は一緒に帰った。

「どうしたの?」

穏やかな声が聞こえる。

…怒り狂われたらどうしよう。
体の奥底が恐怖で震えそうになりながら聞いてみた。

「凛、今年は桃ちゃんの保育園に一時保育で預けようと思うんだけど」

間髪入れずに

「いいと思うよ」

即答されるとは思ってもみなかった。

「ハルも妊娠している事だしね。
利用出来る事は利用した方が良いよ」

…あ、そっちの理由なんだ。
少しガッカリして続ける。

「その後もお兄さんの病院を手伝うなら来年の保育園の申し込みをしようと思うんだけど」

「その方が良いよ。病院は感染も心配だしね。
まあ保育園も入れたらこれでもかって感染するけど、同い年の友達が出来ていいと思う」

あれ、あっさりと…。

「あの…」

背中に変な汗が流れた。
手のひらを握りしめて聞く。

「私立の有名な幼稚園に行かせなくて良いの?」

その瞬間、車が急に停車をした。
事故でもしたのかと思ったら。
目の前の信号が赤。
少しホッとしていたら急に透が後ろに振り向いた。

「…ハルは有名私立幼稚園に凛を入れたいの?」

真夏なのに。
いつもより一段低い声と透の冷やかな目線に真冬を感じた。
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