ばくだん凛ちゃん
「ハルはこの高石という家にどんなイメージを持っているの?」

透は手のひらを組んで私を見つめた。
ブリザードはマシになり今は細雪のような冷たさ。

「高学歴一族」

本当にそうだと思うから率直に答える。
透は組んでいた手のひらを離し、右手を頭に置いた。
そして髪の毛をギュッと握る。

「高学歴でも人間的に外れていたら意味がない」

大きくため息をついた透は呆れた眼差しをこちらに送る。

「…僕は凛にそれなりの教育はするけれど、学歴や就職も凛が納得できる所を選んでほしいと思っている」

それは私も同じだけどね。

「医者にならなくてよいの?」

お義父さんもお兄さんも透もそうなのに。
そういう教育はいらないのかなって思う。

「ならなくてよい。
凛が望めば話は別だけどね」

透が少しだけ微笑んだ。

「特に小児科は勧めない。
でも、凛が望めば…頑張って欲しいと思う。
辛い事も多いけれど、その分得ることも多いんだ」

そう聞くと本当は凛にもそういう道を進んでほしいんじゃないかって思うんだけど。

「凛は好きな事をしていいと思うよ。
勉強が苦手ならスポーツでも芸術でも、好きな事をすれば良い。
親が医者だからといってその道を進むように教育しても本人が嫌いだからとか向いてないと絶対に上手くいかない。
だからね」

透は私をじっと見つめた。

「凛はそんな有名幼稚園とかに行かなくていい。
それよりも凛に大事なことは小さい時から色んな人に会う事だよ。
僕は小さい頃からそんな触れ合いもなく育ってきて人間関係の築き方なんて知らなかった。
それを知ったのは…」

透は俯いた。
凄く切なそうな顔をして。
どうしたのかなって私が覗きこもうとすると透は顔を上げて悲しそうに微笑む。

「ハルと別れてから。
大学に入ってようやく人間関係の築き方がわかった。
それからいろんな人と触れ合うようになって今の僕がいる。
それでも、まだまだ足りない。
もっとたくさんの人に出会って自分の世界を広げないといけないって思うんだ」

そう言う透の目はキラキラに輝いていた。
私も微笑んでウンウン、と頷く。

「そういう透が私、好きだな」

心の底から思う事。
彼のキラキラした目は、本当に一片の曇りもない。

「……」

何、無言になってるのよ?
透を見ると顔を赤くして固まっていた。
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