ばくだん凛ちゃん
とはいえ。

透の言う『人と触れ合うチャンス』って難しいと思う。
中々難問を吹っ掛けるのよね、透って。

翌日、善は急げという事で赤ちゃん広場に行くと舞さんがいて安心した。
私が今、知っている人と触れ合うチャンスはここしかない。
けれど、先にいる住人たちの結束が固くて中々入っていけない。
だから舞さんがいると安心する。

「その後、体調はいかがですか?」

お互いの子供をカーペットの上に寝転ばせて私たちはヒソヒソと話をする。
別に悪いことをしたわけじゃないのにね。

「ええ、おかげさまで。
今回はこの子の時と比べてずいぶん楽です」

舞さんはホッとした様子で笑顔を見せてくれた。
時々強烈なつわりが来るけれど凛の時のようにずっと体調が悪いわけではない。
だから来月からは透と共に生駒医院でお世話になることが正式に決まった。
とはいえ、一時保育の関係で当面週3日なんだけど。
ただ。
それを知ったお義母さんが保育園に預けられない時に予定がなければ見てあげる、と言ってくださった。
私が働くことに全く反対しなかったのには驚いたけれど、透は
「兄さんの助けになるなら、と思っているんじゃない?」
そう毒を吐いていた。
確かにお義母さんは透よりもお兄さんの方が可愛いのだと思う。
それは今まで見ていて何度も思った。

「ただ、舞さん」

そう、働くという事は。

「今後、こちらには中々来られないかもしれません」

「えっ?」

「私、生駒医院の経理とかお手伝いに行きます。
凛は一時保育にでも預けて」

舞さんは目を丸くして

「羨ましい!私も行きたい!」

と大きな声が出て、思わず舞さんは口を押えて周りを見回した。
周りのママさん連中は驚いた様子でこちらを見ている。

「至先生と透先生のコンビなんて…
見てみたいし一緒に仕事したいです!!」

舞さんはそう言って慌てて手を振ると

「いやいや、そんな事をハルさんに言ってもねえ。
すみません、脳内で勝手に想像して盛り上がってしまいました」

私も思わず微笑む。

「私もまた働きたいです、病院で。
でも…紺野はもういいです。
もう少し、この子が大きくなったら託児所のある病院にでも行こうと思います」

舞さん、本当に看護師としての仕事が好きなんだなあ。
こういう人にこそ生駒医院に来て貰えたらなあ。
今の看護師さんたちは良い人も多いけれど、お兄さんに反発している人もいる。
舞さんみたいなお兄さんに夢中な看護師さんならもっとうまく回りそうな気がする。

「また、お休みの日とかにお茶でもしましょうね!!」

そう明るく振舞ってくれる舞さん。
私も笑って頷く。

子供たちも仲良くカーペットの上をゴロゴロと転がっていた。
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