ばくだん凛ちゃん
初日の午前診を終えてどうも違和感がある。

昼休憩、僕は休憩室で一人、昼食を取る。

他の小児科医は午前診で終わるので僕は一人。
午後1時過ぎ。
今日はまだ患者数が少なかったのか3診制が功を奏したのかはわからないが、紺野より早い時間に休憩が取れた。

ここのスタッフは午前か午後か、どちらかだけ入っている人が多く、またフルタイムで入る人も一旦自宅へ帰る人が多い。

騒がしいのが当たり前な日々だったのでこの静けさは異様だった。

ドアがノックされて一瞬、ビクッとする。
僕が返事をする前に入ってきたのは兄さん。

ようやく午前診が終わったのだ。

「さすがに小児科は3診だと早いな。
まあ、それも今のうちだと思うけど」

…今のうち?

「どういう意味?」

兄さんの含み笑いが気になる。

「お前はこの辺りじゃ有名な小児科医だからね。
紺野で透に診てもらいたいと思ってもまず普通の外来は余程の事がないと無理だし。
紹介で入院してきた子や退院した子の経過観察でいっぱいだしね。
そんな経験豊富な先生が紺野を出て、町中の診療所に常勤で来たとなると…。
結構受診する人が増えると思うよ。
言って悪いけれど、この辺りの小児科で評判の良い所はない。
透、色々と期待してるよ」

「まあ、期待を裏切らないように精一杯努めます」

期待され過ぎだよ、僕。



今まで兄さんと紺野でもお昼が一緒になった事があるが、夕診が始まる時間くらいまでじっくりと話する事なんてなかった。

というか。
医師になってからこんなにも兄さんと話をしたのは初めてかもしれない、というくらい話をした。

それが何となく嬉しかった。
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