ばくだん凛ちゃん
そんな嬉しい事があった翌日。
まるで地獄絵図のような修羅場を見る事になるとは。
「ハル、一緒に保育園へ行こう」
その日は一時保育も空きがあり、凛を早速預ける事になった。
「えっ、時間的に大丈夫?」
保育園自体は7時から開いている。
桃子さんの妹さんか桃子さんが交代で園を開けるそうだ。
今日は妹さんが担当らしいが、8時には桃子さんも来る。
病院のミーティングが8時半からなので8時20分までに預けたら良いかと。
そう思って言ったんだけど。
凛は生後7か月ちょっとの割には勘が鋭い。
朝からずっと愚図っている。
「凛、どうしたの?」
抱き上げて異常がないかどうかチェックをすると目を三角にして泣き出す。
どこかが痛いとかではない。
僕の雰囲気から察しているのか。
色んな意味で緊張しているハルに反応しているのか。
「ブー、ブー」
ようやく泣き止んだかと思えば口を尖らせてブーブー言い出す。
凛、可愛い顔が台無しだよ。
出掛ける準備をして僕は凛を車まで抱っこした。
ハルに抱っこしてもらえなくて
「あうー…。キー!」
と奇声を上げた。
最近、声で何かを訴える事が多くなった。
成長している証だ。
保育園に着くと事務室で桃子さんの妹、撫子さんが今か今かと待っていた。
「おはよう、凛ちゃん!!」
撫子さんも桃子さん同様、凛を可愛がってくれる。
凛は知っている顔を見たせいか、ニヤニヤ笑い始めた。
「おはようございます、今日は宜しくお願いします」
僕が頭を下げると
「任せておいてください!!」
桃子さんとよく似た笑顔を見せてくれた。
「よし、じゃあ今からお部屋に行こうね!!」
撫子さんは凛をすっと抱き上げて部屋に向かう。
まだ早出保育の時間なので園児の人数も少ない。
「おはよう、凛ちゃん!」
そこへ桃子さんが現れた。
「透さんもハルちゃんもおはよう!!」
桃子さん、朝からテンション高いなあ。
「せんせー!!おはようございます!!」
部屋の中から年長さんくらいの子供たちが桃子さんに挨拶をする。
きちんと挨拶出来るんだなあ、と感心した。
「じゃあ、お願いします」
ハルが桃子さんと撫子さんに言うと
「いってらっしゃーい!!」
その瞬間。
「うぎゃー!!!!!」
園中に響きそうな凛の声。
必死にこちらへ手を伸ばして助けを求める。
撫子さんはニコニコしながら暴れる凛を抱っこし続けている。
「さ、透さんもハルちゃんも行って!!離れられなくなるよ!!」
桃子さんの言葉に我に返る。
一瞬、脳裏にやっぱり預けるのを止めようかっていう考えが浮かんでいた。
僕はハルの手を握って出入り口に向かった。
ハルはその声を聴いて不安そうにしている。
明らかに焦っている。
「ぎゃあああああああ!!」
一瞬、振り返ると凛が必死に泣くときにする三角の目をしてこちらを見ている。
まだ…可哀想だったかな。
でも、ハルと病院に一緒にいても遊べないし。
病原体も浮遊しているし。
それは保育園も一緒だけど、同い年の子達もいていい刺激になると思うし。
ただ。
切ない。
無理して預けて本当に良かったのかと思う。
凛が顔をくしゃくしゃにして泣いているのが脳裏から離れない。
…世の中の共働きのお父さん、お母さんは皆、こんな風に離れがたい心境で仕事に行っているんだ。
子供を持って初めて知った気持ちだった。
いくら小児科でたくさんの親子と接しているとはいえ、こんな気持ちになるなんて。
何となくわかっていても、その本質は全くわかっていなかった。
僕もまだまだ、学ぶことがあるよね。
まるで地獄絵図のような修羅場を見る事になるとは。
「ハル、一緒に保育園へ行こう」
その日は一時保育も空きがあり、凛を早速預ける事になった。
「えっ、時間的に大丈夫?」
保育園自体は7時から開いている。
桃子さんの妹さんか桃子さんが交代で園を開けるそうだ。
今日は妹さんが担当らしいが、8時には桃子さんも来る。
病院のミーティングが8時半からなので8時20分までに預けたら良いかと。
そう思って言ったんだけど。
凛は生後7か月ちょっとの割には勘が鋭い。
朝からずっと愚図っている。
「凛、どうしたの?」
抱き上げて異常がないかどうかチェックをすると目を三角にして泣き出す。
どこかが痛いとかではない。
僕の雰囲気から察しているのか。
色んな意味で緊張しているハルに反応しているのか。
「ブー、ブー」
ようやく泣き止んだかと思えば口を尖らせてブーブー言い出す。
凛、可愛い顔が台無しだよ。
出掛ける準備をして僕は凛を車まで抱っこした。
ハルに抱っこしてもらえなくて
「あうー…。キー!」
と奇声を上げた。
最近、声で何かを訴える事が多くなった。
成長している証だ。
保育園に着くと事務室で桃子さんの妹、撫子さんが今か今かと待っていた。
「おはよう、凛ちゃん!!」
撫子さんも桃子さん同様、凛を可愛がってくれる。
凛は知っている顔を見たせいか、ニヤニヤ笑い始めた。
「おはようございます、今日は宜しくお願いします」
僕が頭を下げると
「任せておいてください!!」
桃子さんとよく似た笑顔を見せてくれた。
「よし、じゃあ今からお部屋に行こうね!!」
撫子さんは凛をすっと抱き上げて部屋に向かう。
まだ早出保育の時間なので園児の人数も少ない。
「おはよう、凛ちゃん!」
そこへ桃子さんが現れた。
「透さんもハルちゃんもおはよう!!」
桃子さん、朝からテンション高いなあ。
「せんせー!!おはようございます!!」
部屋の中から年長さんくらいの子供たちが桃子さんに挨拶をする。
きちんと挨拶出来るんだなあ、と感心した。
「じゃあ、お願いします」
ハルが桃子さんと撫子さんに言うと
「いってらっしゃーい!!」
その瞬間。
「うぎゃー!!!!!」
園中に響きそうな凛の声。
必死にこちらへ手を伸ばして助けを求める。
撫子さんはニコニコしながら暴れる凛を抱っこし続けている。
「さ、透さんもハルちゃんも行って!!離れられなくなるよ!!」
桃子さんの言葉に我に返る。
一瞬、脳裏にやっぱり預けるのを止めようかっていう考えが浮かんでいた。
僕はハルの手を握って出入り口に向かった。
ハルはその声を聴いて不安そうにしている。
明らかに焦っている。
「ぎゃあああああああ!!」
一瞬、振り返ると凛が必死に泣くときにする三角の目をしてこちらを見ている。
まだ…可哀想だったかな。
でも、ハルと病院に一緒にいても遊べないし。
病原体も浮遊しているし。
それは保育園も一緒だけど、同い年の子達もいていい刺激になると思うし。
ただ。
切ない。
無理して預けて本当に良かったのかと思う。
凛が顔をくしゃくしゃにして泣いているのが脳裏から離れない。
…世の中の共働きのお父さん、お母さんは皆、こんな風に離れがたい心境で仕事に行っているんだ。
子供を持って初めて知った気持ちだった。
いくら小児科でたくさんの親子と接しているとはいえ、こんな気持ちになるなんて。
何となくわかっていても、その本質は全くわかっていなかった。
僕もまだまだ、学ぶことがあるよね。