ばくだん凛ちゃん
母親がいない、初めての夜。

凛はハルを探すようにして泣いていたがそのうち慣れてきたのか、諦めたのか。

お風呂に入ってからミルクを飲ませ、しばらくしてからタオルケットの上に寝かせると最近得意げにする寝返りを何度もしているうちにいつの間にか眠っていた。

それから僕はようやく自分の食事をする。

ハル、いつも慌てて食事をしていたんだろうな、とか色々と考えながら。

今までハルに任せっきりだったので不安は大きい。
診察よりもプレッシャーを感じるなんて、本当に情けない。
どれだけ関わっていなかったか、よくわかる。

僕も凛も。
少しは頑張らないといけないな。

ハルに対する依存からの脱却。

…なんてね。



夜中は2回授乳で起きた。

あんなに紺野で当直はいっていたのにたった2ヶ月弱で夜中に起きると身体へのダメージが大きくなっている事に気がつく。

たまに紺野にバイトで呼ばれるけれど、もう常勤では無理だと悟った。



翌日、僕は凛を連れて病院へ。
ちょうど一時保育の枠が空いていたので8時過ぎに預けに行く。

「透さん、夕方は私が凛ちゃんを病院に連れていきますから安心してください」

桃子さんは嬉しそうに笑った。

「助かります、ありがとうございます」

僕は頭を下げて凛を渡す。

凛は相変わらず全身で怒りを表し、泣いている。

「はいはい、凛ちゃん。
また夕方にはお父さんに会えるからね」

凛は桃子さんに抱っこされながら0歳児の部屋に入っていった。

僕は少しだけホッとして隣の病院に向かう。

前よりは泣き方がマシ。
少しは慣れてきたんだな、と思う。



午前の診察はそれほど混雑していなかった。

受付から回ってきた問診票を見て、生後2ヶ月の赤ちゃんへの初めての予防接種があった。

2ヶ月か…。
凛と7ヶ月違うのか。

そんな事を考えながら僕は名前を呼んだ。
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