ばくだん凛ちゃん
「じゃあ、帰るね」

午後6時になると病院は夕食の時間になる。

真由ちゃんが食事をテーブルまで運んでくれた。

その間、一瞬だけ凛を抱っこしたけれど、入院前より少し重くなっている感じがした。

「凛、またね」

ふらふらながらも座る事が出来るようになった凛。
私の膝の上に座らせて頭を撫でる。

「あ、あ!」

凛は何度か短い言葉を発して険しい顔をする。
気配を察したのか、離れたくないみたいでグズグズ言い始めた。

「凛ちゃん、もうすぐしたらお父さんも帰ってくるからね。
おばさんの家で待っていようね」

真由ちゃんはそっと凛を抱っこする。
凛は仰け反って大泣きする。

「やっぱりお母さんが一番なんだよね。
また連れてくるから、凛ちゃん、今日は帰るよ」

真由ちゃんは慣れた手つきで凛をしっかり抱っこする。

「じゃあ、ゆっくり食事してね」

「色々とありがとう」

私がそう言うと真由ちゃんは笑って部屋を出ていった。

凛の泣き声が廊下から聞こえる。



凄く、切ない。



凛の泣き声が段々小さくなって、やがて聞こえなくなった。

胸が張り裂けそう。

真由ちゃんが用意してくれた食事に手をつけようとしたけれど、目から涙が溢れてくる。

泣いても仕方ない。

でも…必死に泣き止もうとするんだけれど、止められない。

凛の成長を毎日、見たいのに。
見られない。

悔しくて悔しくて堪らなかった。
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