ばくだん凛ちゃん
家に着くと凛は熟睡していた。
お風呂は僕のいない間に兄さんに入れてもらっていたみたいで随分と浴槽の中で湯をバシャバシャ叩いて兄さんに掛けたらしい。

…中々やるなあ、凛。



ベビーベッドにそっと寝かせる。
最近は一人で寝るのが嫌なのかベッドに置くと泣いてハルを困らせる事が多く、仕方なしに僕とハルの間に寝かせる時があった。

小児科医が添い寝同然で子供と寝たら、万が一子供が窒息したらどうするんだ?

なんて言われそうだけど。

いくら気を付けていても事故が起きる時は起きる。

これは子供に限った事ではない。
どんな事でも言える。

そうする事で凛が心の底から安心するなら僕は良いと思う。

そっとベッドから離れようとしたら

「あぅ…」

凛の声が聞こえる。
ゆっくり振り返ると眠そうな目をしてこちらを見ていた。

「…起きたのかあ」

ガックリ。

今から遅い夕食を取ろうと思っていたのに。

凛を抱き上げて一緒にリビングへ行く。
その間に凛は再びウトウトし始めた。

ハルが帰ってきたら、こんな風に凛と二人で過ごす事もなくなる。

きっと一生のうちで『今』だけの貴重な時間なのかもしれない。

リビングのソファーには座らず、その床に座りソファーを背もたれにする。

凛は気持ち良さそうな寝息を立て出した。

そんな姿を見ていると僕も無性に寝たくなる。

もう食事はどうでも良くなり、再びベッドに戻った。

凛を自分のベッドの壁際に寝かせ、僕もその隣で横になる。



あ〜あ。

ハルもいたら最高に幸せな時間なのに。



まあ江坂先生の口ぶりからするともうしばらくすれば退院出来るだろう。

退院してもしばらくは夕診の時短を使おうかな。

ハルが帰ってきたら、色々と手伝いたい。

一緒に過ごす時間を少しでも長くしたい。

僕が求めているのはこういう事なのかもしれない。

お金などでは買えない、かけがえのない一時。

医師としてそれは精進していないんじゃないかと言われても、今しばらくは何を言われても人生の中の一瞬のこの時間を僕は大切にしたい。

その分、後で精一杯お返しをする。



だからせめて、今だけは…。
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