ばくだん凛ちゃん
それから1ヶ月後の11月。
ようやくハルは退院する事になった。

江坂先生も慎重になって中々退院許可を出さなかった。
…元院長の父さんが圧力を掛けているのかと思ったくらい。



その前週。

ハルには申し訳ないけれど、僕は凛を連れてプチ旅行をした。
凛と二人だけの旅なんて一生に1回、と思う。
土曜午前の診察を終えると、凛を車に乗せた。

行き先は鈴鹿サーキット。

あのサーキットへ行くのは本当に久しぶり。
この土日に全日本ロードレースの最終戦があり、久しぶりにK-Racingの応援に行く事にした。
もう、何年ぶりだろう。
最後に行ったのは…もう思い出せないくらい、昔だ。

あそこならレース以外にも凛も楽しめるし。
そう思ったから二人で行こう、と。

土曜の夜に到着してそのまま近辺のホテルへ。
そこはK-Racingのメンバーも宿泊している。

後で挨拶に行くか。



凛をお風呂に入れてミルクを飲ませると、長時間車で移動したので疲れたのか、凛は寝てしまった。

寝ている間にここに来るまでに買ったお弁当で夕食を済ませた。
凛が寝てしまって時間をもて余すので普段はほとんど見ないテレビを付けてみたが楽しくない。
すぐに消して、ベッドに寝ている凛の隣で横になる。

そうするうちに僕まで眠くなって、意識が飛ぶ。



…案外、僕も疲れているんだな。
2、3年前は車をいくら運転しても眠くならなかったし。
いくらでも起きていられたのにな。

紺野を辞めて、当直は月2回くらいのバイトで入るくらいまで減り、だいぶ体も衰えてきたみたいだ。

僕は凛を見つめながらゆっくりと目を閉じた。
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