ばくだん凛ちゃん
ハルちゃんが父さんと母さんと3人で夕食を摂る間、僕はリビングで凛ちゃんを抱いたりあやしたりしていた。

夕食はちゃんと桃ちゃんが作ってくれているから誘ってくれた母さんには悪いけれど断った。



僕には子供がいないから、何もわかってはいないけど。
抱っこくらいは出来る。
ただ…抱っこしていても凛ちゃんは目をパッチリ開けていて、寝そうにない。
2階から1階へ降りる間に眠気が覚めたようだ。

「凛ちゃん、本当にあだ名の如く、ばくだんちゃんですねえ」

思わず、口に出して言ってしまう。

まだハルちゃんのお腹にいた時、色々な意味でそう呼んでいたら、産まれてきたら本当に…親泣かせと言うか何と言うか。

この子には何の罪はない。

一番の、責任の所在は透なんだけど。

「おっと…」

凛ちゃんがミルクを吐いた。
まだまだ胃も未熟だから仕方がない。
ガーゼで口元と首の辺りを優しく拭いた。



桃ちゃんとの間に一人でも子供がいたら、今とは全然違う生活だったのだろうね。
桃ちゃんは自由奔放だからこんな事を言うと怒るかもしれないけれど、僕は子供がいたらやはり跡を継いで貰いたいから小さい頃からそれなりの教育を受けさせるだろうな。
透は反発してきたから絶対にそれはしないな。
やりたいように自由に育てるかな。



ただね。
4月から僕は桃ちゃんの実家の跡を継ぐ。

桃ちゃんのお父さんは開業医。
しかも代々続いていてそれなりに規模が大きい。
4月から僕はそこの院長になる。

問題はその後。
子供がいない。

どうするんだろ…。

僕が死んだらどこかから雇われ院長を連れてくるしかないのかな。



そう考えるとすんなり子供が出来た透が羨ましい。



「うぎゃ…」

あ、泣いた。
涙も流さずに声だけで泣いてる。

僕は立ち上がってあやし始めた。
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