ばくだん凛ちゃん
「ふう…」

家に入ると大きなため息が出た。
今日は病院で色々と見ることが出来た。
透がどんな風に健診をしているのかもわかったし。
お義父さんがたくさんの秘書を抱えているのもわかったし。

透が乳幼児・子供に接して仕事をしてる姿なんてまず見られないし。
それを見ることが出来ただけでも良かったかな。

部屋の暖房を付けて荷物を片付ける。
グズグズ言っている凛のおむつを替えて授乳。
クリクリの目をしっかり見開いて飲む姿は生まれたての頃よりたくましくなってきたと思う。



「ただいま」

授乳も終わろうかと思った時、玄関が開く音と透の声が聞こえた。

「おかえり」

つい2時間ほど前まで顔を合わせていたので変な感じがする。
凛はもう満足したのかゆっくりと口を話してウトウトし始めていた。

「ごめん、まだ何も用意出来ていないの」

「いいよ。
父さんを待っていたんだろ?
もう少し待ってくれたら僕、一緒に帰ることが出来たのに」

…拗ねてる?

透はそう言って少し不満そうな顔をしてクローゼットに向かった。
思わず、笑いそうになる。

「お義父さん、春から非常勤だって言ってたけど」

透が服を着替えてリビングにやって来たのでそう言うと

「うん、そうらしいね。
病院もいい加減、完全引退させたらいいのにね」

と冷たく言い放つ。

「でも、辞めたら大変なんでしょ?」

「うん、だから引き留めたみたいだけどね」

透は私の隣に座る。
肩と肩が触れる。
…診察室を出る時、透があんなことを言うから意識してしまう。
出来るだけ違う事を考えて自分の気持ちを紛らわせよう。
縦抱っこをすると凛はウトウトしながらげっぷを出す。
それを見た透が手を差し出してくるので私は抱っこを代わってもらった。

「ご飯の準備、してくるね」

私がそう言って立ち上がろうとすると腕を掴まれて再び座り込んでしまった。

「ちょっと、待って」

うわ、どうしよう。

透が私の額に自分の額をコツンと当てた。
そしてそのまま唇にキスをする。

「凛が静かにしてくれているから少しだけ」

透が耳元で囁いた。

「…は、恥ずかしい」

私は透の腕の中にいる凛に視線を落とす。
気持ちよさそうに眠りに入っている。

「寝てるから大丈夫。
それに起きたところでお父さんとお母さんの仲の良さを見せつけてやればいい」

クスッと透は笑うと再び私にキスをした。
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