ばくだん凛ちゃん
5.凛ちゃん お食い初め

○ 至 ○

凛ちゃんのお食い初め。

僕、行けないかもしれない。

透からお招き頂いたのは有り難いが、4月。
第二週の日曜日。
生駒医院を継承して10日も経っていない頃だ。

まあ考えても仕方がないけれど、どうしてもね。
僕が院長になる事に反発して何人か辞めるらしい。
組織の体制が代わるときは仕方がない。

この1年、時間を作っては義父に色々と教えて貰ったが、スタッフの手腕で助けられているな、と思う事は多々あったな。

そういう人が辞めてしまったら…大変。
求人も出したけれど、良い人材はそうそういない。

僕が高望みしすぎなんだろうね。



「こんばんは」

「お兄さん、どうぞ」

仕事帰りに今日は久しぶりに凛ちゃんとハルちゃんの顔を見ようと透の家に寄った。

一時期、パニックを起こしていたハルちゃんも笑顔を見せるようになり、少しは落ち着いたみたいで良かった。

「兄さん」

その後ろから透が凛ちゃんを抱いてやって来た。

「透、今日は早いんだな」

僕より早いとは珍しい。

「当直明けだし」

相変わらず、小児科の当直回数が多いな。
それでも透や神宮寺先生は今まで地方で鍛えられてきたから出来ている部分はある。

「兄さん、ご飯まだでしょ?
一緒にどう?」

「じゃあお言葉に甘えて」

今日、桃ちゃんは保育園の送別会で家にいないので丁度良かった。
有り難い。



凛ちゃんは相変わらずグズグス言っていた。
透がずっと抱っこしていても、まるで文句を言い続けているかのように。
…透の抱き方に満足しないのかな。
一応、それなりに有名な小児科医なんだぞ?

「僕が抱っこしておくよ。
二人で少しはゆっくりと食事しなさい」

僕は凛ちゃんを抱っこしようと手を伸ばした。

「いいの?」

透が申し訳なさそうに言う。

「いいよ、こちらこそご馳走になるのに、それくらいはするし」

腕に凛ちゃんの体重が掛かる。
まだまだ軽いな。

少しだけウニャウニャ言うと、凛ちゃんはウトウトし始めた。



ほ〜、子供がいないオジさんの慣れない抱っこの方が好きかね?
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