ばくだん凛ちゃん

☆ 透 ☆

「母さん、今、大丈夫?」

昼休憩に僕は母さんに電話を入れた。

「どうしたの?」

出掛けているようで後ろが騒がしい。

「頼みたい事があるんだ」

間髪入れず

「ハルさんの事?」

と返ってきた。

「うん…」

「さっき、様子を見に行ったわよ。
だいぶ疲れているみたい」

それは僕も知っている。

昨日、夜中に帰宅したら、泣きそうになりながら凛を抱っこしていた。

昼前に退院して、凛にとっては慣れない自宅。
病院とは全く違う環境の中、慣れない母親があたふたしながら自分のお世話をする。
…凛にとっては不安だらけだ。

帰ってからしばらく僕が抱っこしていると凛はゆっくりと眠りに落ちた。

ハルはそれを見てガッカリしていた。

…そりゃ、僕。

NICUで赤ちゃん、抱っこしているからね。

それに小児科病棟でも子供と常に接している。

新米パパとはいえ、本当の新米パパと比べたら扱いは慣れているし、ハルよりも抱っこのキャリアは長い。

きっとハルは僕や母さんが凛を抱っこして泣き止んだり寝たりするので母親としての自信を無くしているのだろう。

…別に気にする事でもないのにね。

きっと1年後にはほとんど家にいない父親よりも一緒に過ごしてくれる母親にベッタリになっているだろう。

子供はそういう事をよくわかっているから。

きっと僕なんて、あと15年後くらいには家にいたら嫌がられる存在になると思うね。



「用事が終わったら下に呼ぼうと思ってるから。
心配しないで。
ああ、何なら桃子さんに今から行って貰うわ。
元々夕方から家に来る事になっているし」

母さんの声で我に返る。

「うん、じゃあ頼んだよ。
桃子さんにもよろしく伝えて」

僕は通話を終えると天を仰いだ。

これは中々大変だな…
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