ばくだん凛ちゃん
7.凛ちゃん 社会デビュー

◇ ハル ◇

「赤ちゃん広場って透、知ってる?」

5月中旬。
4ヶ月検診の時に保健師さんに貰ったチラシを透に見せた。

「ああ、市が保育園に委託してやってる、年少までの子供が遊んだり、親同士の交流するところだね」

透はそのペーパーを手に取った。

「行くの?」

チラッと透は私を見た。

「うん、行ってみようかなあって」

ここから一番近い保育園で月・火・木に開催されている。

「凛をそういう場所に連れていくのは良い刺激になるとは思うよ」

まあ、私も良い刺激になるかな。

「ただね、ハル」

透の目が鋭くなって、一瞬ビクッとした。
こういう時の透は怖い。

「もし、僕の職業を聞かれても言わないで」

「…えっ?」

聞く人なんているのかな?

「そこに集まる人は聞かなくても、スタッフの人が何気に聞く時があるから。
それを聞いたママさん達は自分の子供が病気になったら『凛ちゃんのパパに聞いて!』とかハルに言うから」

透は飲みかけの紅茶が入ったカップをテーブルに置いてため息をついた。

「僕はそんな風に言われても答えない。
実際に目の前で診ないとわからないから」

今まで、何人もそういう先生を見てきた透。
そうなって一番苦しむのは奥さんだったって。

透は私を見て苦笑いをする。

「僕の事を聞かれたら医療関係とでも答えておいて。
そう言えば嘘じゃないから」

そう言って透は再びカップを手に取った。



…医師の妻って中々大変ね。
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