ばくだん凛ちゃん
「夫は私より7歳年下で」

「えっ!」

驚いて思わず声を上げた。
慌てて口を押さえつつも、再度写真を見る。

確かに、よく見ると私達より若いけどパッと見た感じは同い年くらいだと思った。

「…ひょっとしてそれも周りから妬まれていたのかもしれないですね」

私が言うと舞さんは苦笑いをしながら頷いた。

「付き合い始めたのは1年半くらい前で…紺野総合の新年会の後」

…という事は。
私と透が再会する少し前。

「至先生がその後、2次会みたいなのに誘ってくださって。
そこに夫も一緒に…。
後から聞いた話では夫はだいぶ前から私の事を気に入っていたらしくて至先生にどうにか二人だけになれるように頼んでいたんですって」

お兄さん、色んな人の幸せのお手伝いをしているんだ。

「その日のうちに付き合おう、という話になり。
4月に妊娠がわかり、すぐに入籍しました」

どこかで聞いたような話。
まるで…私と透みたい。

「同じ頃、透先生も彼女が妊娠して、っていう話を聞いて妙な親近感がありましたが、まさかこんな所で会うなんて」

「本当にそうですね」

偶然って凄い。

「良かったらこれからも仲良くしてください」

舞さんの笑顔に私も笑顔で返した。

…けど。

いきなり、胃から何かが沸き上がった。

「ごめんなさい、お手洗いをお借りしていいですか?」

口を押さえつつ何とか言葉を出す。

「ええ、こちらです」

舞さんは素早い動きで案内してくれた。



「初めてお邪魔して、いきなりこんな事になってごめんなさい」

ようやく吐き気が止まり、リビングに戻ると冷茶が用意されていた。

「いえいえ…。
ひょっとしておめでたですか?」

「…え、どうだろう」

そんな事、考えてもみなかったけれど。
首を傾げてしばらく考える。

「あ…。
そういえば一か月前に生理が再開したのに今月は少し遅れているかも」

「きっとそうですね!
近々、病院に行ってくださいね」

舞さんはニコニコ笑っていた。
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