大人の初恋
 私と彼は、ふざけ合いながら往来を歩いた。
 今夜は金曜日とあって、夜11時でもまだ沢山の人が往き来している。

「きゃ…」
 前から来た数人連れの男の足に躓いた拍子に、思わず彼の腕にしがみつく。

 酔っ払いが振り返って、ギロリと私を睨みつけた。
 私は一瞬怯んだが、彼が私の肩を抱き寄せて一覧すると、ソイツはチェっと舌打ちしてそのまま向こうへ行ってしまった。

 その後も彼は肩を抱いたまま、ロマンチックな演出に、2人とも何やら無口になって寄り添い歩く。
 

 彼は道中に電話を入れて、手慣れた様子でホテルの空きを確認した。

……どどど、どうしよう。

 一夜の冒険。

 目論み通りの筈なのに、私は急に意識し始める。
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