大人の初恋
 そうだった、今夜の私は遊び馴れた大人の女。
 あくまで対等に、彼にイニシアチブをとられる訳には…いか…ない…

「自分こそ。
 紳士って顔して…男の匂いがする……」
 サッと唇を離すと、男が笑った。

「なんて呼ぼうか、サッちゃんは…サチコ?」

「サツキよ…あなたは?」
「タツマ」

「ナルセ…タツマ…さん」
「サツキ…」

 耳元に、吐息と共に何度も囁かれる『サツキ』の深い声色が官能を擽った。

 気がつけば上手く誘導されている。

 淫らな気を煽られて、馴れた女のフリのまま、大胆に彼を求めていた。

 彼の肌けた鎖骨に口づけると、口の端で笑って、同じように私のそこに痕を残した。
 それからはふざけ合い、明灯のままに互いに衣服を脱がせあう。

 細身に思えた彼の体躯は、均整がとれた筋肉質、年齢相応のダブつきもない。

 自分の身体を見せるのが、恥ずかしくなるくらいだ。
 思わずゴクリと唾を飲むと、彼はまた穏やかに笑う。

 私が恥じたのを知ってか知らずか、ありきたりな言葉でそれを封じた。

「綺麗だ、サツキ」
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