大人の初恋
「『俺のコト、そんなに好きじゃないみたい』っだってさ……そんなことないよぅ……大好きだったんだよぅ…結婚したかったんだよぉ…」
「あ、ダメだ。聞いてねぇな、こりゃ」
涙ながらに、苦いジントニックを一気飲み、再びカウンターに頭を伏せた私は、酔眼をはたと見開いた。
「あ、ねえねえ。
でもさ。カレは結局、アッチの娘を選んだ訳だから。
結果としては私の方がウワキ相手ってこと?信じられない…
ウワーーーン」
マスターが、“手に負えない” と溜め息をついた時。
カウンター席の隅から、含み笑いが聞こえた。
「んん?」
気付いて目を遣ると、やがてそれは、爽快な大笑いへと変わる。
「………」
ムッとして立ち上がり、私は隣の席に座り込んだ。
「あ、ちょっと…」
やけ酒に潰れかけた私は、性質(たち)の悪い酔っ払い。
マスターの制止を振り払い、その男に絡み始めた。
「ちょっとぉ、そこなアナタ?失礼じゃありゃあせんの…
ミジメな振られオンナがそんなにオカシイの?」