大人の初恋
 私の膝上のバイブの振動と同時に、部長の胸ポケットから無機質な電子音が、広くもない部内に響いた。

「……部長?」
「ああ、失礼」

 少し慌てぎみに胸からフォンを取り出した彼は、画面の着信を確認し、すぐに電話をピッと切った。

 そうして……

 私の方をチラと見て、ギョッと目を見開いた。
 さらにもう一度、確かめるように目を合わせると、少しだけ眉を潜ませてなんとも言えない、苦~い顔をしたのだ。


 それを見てニッコリと笑みを浮かべた私。


 どうだ色男、

 思い出したか。

 ザマアミロ。
< 26 / 79 >

この作品をシェア

pagetop