大人の初恋
4 甘い誘い
「遅刻に、勤務中の私用電話とは感心しないね、如月主任?」

「ぐっ。
 だって、前の日は貫徹だったし。それにあれは貴方がっ……」


 私の携帯に、“ナルセタツマ”からショートメールが入ったのは、それから2週間が経った水曜日のことだった。

“例のバーで 8時”
 余程自信があると見える。
 たった2節の、ひどく簡素なお誘いを、よっぽどムシしてやろうと思ったが……

 気が付けば10分前に、カウンター奥から3番目の定位置に座り、キメキメのドレッシー、フルメイクで待っている私がいた。


 少し遅れて来た彼は、当然のように隣に座った。

 マスターのリョウちゃんは、幾分ムスッとしながらカクテルグラスを磨いている。


「で、僕がどうしたって?」

 しかめていた片眉をフッと上げて見せた。
 よく見たら、口の端に笑みを含ませ、目を細めてムキになった私を眺めている。

 からかわれたんだ、悔しいぃっ!

 ムッと剥れてテキーラベースのカクテルを一気に煽った私を、“おいおい”と笑いながら嗜める。
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