大人の初恋
 少し間を置いて、彼は静かに提案を出した。

「こういうのはどう?
 恋人として付き合う。気が向いた時に、連絡をとって逢う。
 浮気はしない。
 どちらかが嫌になるか、気に入った相手が出来たなら、キチンと話して別れよう。
 ルールとして、その時は決して引き留めない。
 本気になれない二人なら、良いと思わない?」

「ふ、ふーん」

 ユルい束縛にフレキシブルな関係、というわけか。

 面倒臭くなく、適度に互いを縛り、恋愛の楽しい忰だけやりませんか?という都合の良いご提案。

 結婚向きの男ではなさそうだし、腰掛けならば……
 まあ、悪くはない…よね。


 自慢じゃないが、自慢だか。

 目の覚めるような美人ではない私だが、不思議とこれまで、殆んど男を切らしたコトがない。
 今回は、2ヶ月とちょっと。まあこんなもん?

 素っ気ない返事はしたものの、この時私は彼の提案に、かなり乗り気だったのだ。

 だが、そこは私。
 即オッケーなどという、物欲しそうなマネはしない。


 それがオトナの女の駆け引きというものさ。

「…もしどちらかが、本気になったら?」
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