大人の初恋
5 厳しい横顔
6月ーー
「ウソッ、サツキ先輩。
もうカレシできたんですかぁ」
ウワ~、タイミング悪い。
早朝の、まだ殆ど人気のない社内の更衣室でコッソリと着替えを済ませた私。
昨夜首に思いっきりつけられたキスマークを隠そうとコンシーラーとファンデーションを駆使していたのを、後輩のアキちゃんに目撃されてしまったのだ。
彼女は嬉しげに駆け寄ってきた。
「あ、あら?随分と早いじゃない。スゴイわ、仕事?」
何事もなかったように、髪をササッと横に下ろし、首の辺りを隠す。
「もー、とぼけたってダメですよ。
ちょっと前に“別れた”って言ってたばっかなのに」
どんな人ですか、私も知ってる人ですか、散々問い詰めた揚げ句、言わない私にあきらめてボヤいた。
「あ~あ。ずるいなぁ~、何で先輩ばっかり」
「いいじゃないの、まだ若いんだから」
「うう…」
「そういえばさ…アキちゃんファンの杉原参事、息子さんが今年証券会社に入ったらしいわよ、紹介して貰ったら?」
「え、本当に⁉」
彼女は一瞬、目を輝かせた。
が、
「…でも、やっぱいいです。今の私には『成瀬部長』がいますから」
「ウソッ、サツキ先輩。
もうカレシできたんですかぁ」
ウワ~、タイミング悪い。
早朝の、まだ殆ど人気のない社内の更衣室でコッソリと着替えを済ませた私。
昨夜首に思いっきりつけられたキスマークを隠そうとコンシーラーとファンデーションを駆使していたのを、後輩のアキちゃんに目撃されてしまったのだ。
彼女は嬉しげに駆け寄ってきた。
「あ、あら?随分と早いじゃない。スゴイわ、仕事?」
何事もなかったように、髪をササッと横に下ろし、首の辺りを隠す。
「もー、とぼけたってダメですよ。
ちょっと前に“別れた”って言ってたばっかなのに」
どんな人ですか、私も知ってる人ですか、散々問い詰めた揚げ句、言わない私にあきらめてボヤいた。
「あ~あ。ずるいなぁ~、何で先輩ばっかり」
「いいじゃないの、まだ若いんだから」
「うう…」
「そういえばさ…アキちゃんファンの杉原参事、息子さんが今年証券会社に入ったらしいわよ、紹介して貰ったら?」
「え、本当に⁉」
彼女は一瞬、目を輝かせた。
が、
「…でも、やっぱいいです。今の私には『成瀬部長』がいますから」