大人の初恋
「おはよう」
始業の30分前に、部長は部屋に現れる。
4月からの、いつもの風景。
するとそれまで世間話で盛り上がっていたオジイちゃん達がピタリと私語をやめる。
緩んだ空気がピィンと張って、部屋全体に緊張感が漂う。
「おはようございます~」
すかさずアキちゃんが、彼にコーヒーを持っていく。
去年まではやってなかった癖に、ちゃっかりしたもんだ。
「ああ、いつもありがとう」
彼は然り気無く片手を上げて、最上級の微笑みと、深い声で礼を言う。
それを聞いたアキちゃんは、恥ずかしそうに銀のトレイで顔を隠す。
オジイちゃんや、私にもついでに持ってきてくれるのが、いかにも彼女らしい控え目さだ。
プライベートとは違う彼のもうひとつの顔は、厳粛な仕事人としての顔。
去年まで、仲間のミスをあげつらうようなここの仕事を、散々嫌がっていたアキちゃんが、一念発起して早朝出勤しているのも、彼に認められたいからに違いない。
始業の30分前に、部長は部屋に現れる。
4月からの、いつもの風景。
するとそれまで世間話で盛り上がっていたオジイちゃん達がピタリと私語をやめる。
緩んだ空気がピィンと張って、部屋全体に緊張感が漂う。
「おはようございます~」
すかさずアキちゃんが、彼にコーヒーを持っていく。
去年まではやってなかった癖に、ちゃっかりしたもんだ。
「ああ、いつもありがとう」
彼は然り気無く片手を上げて、最上級の微笑みと、深い声で礼を言う。
それを聞いたアキちゃんは、恥ずかしそうに銀のトレイで顔を隠す。
オジイちゃんや、私にもついでに持ってきてくれるのが、いかにも彼女らしい控え目さだ。
プライベートとは違う彼のもうひとつの顔は、厳粛な仕事人としての顔。
去年まで、仲間のミスをあげつらうようなここの仕事を、散々嫌がっていたアキちゃんが、一念発起して早朝出勤しているのも、彼に認められたいからに違いない。