大人の初恋
 私はこれまで自分を“しっかりしたお姉さん”キャラだと思い、意識してやってきたけれど。

 本当は年上の男に甘える方が好きだなんだということに改めて気がついた。
 そういえば、小さな頃はかなりのファザコンだった気がする。


 彼は毎回、ドレスアップした私をエスコートしてくれる完璧な紳士。

 そしてその後は決まって高級なディナーに、気か乗れば軽くお酒を飲んで、それからホテルで一夜を過ごすのだが……

 ベッドの上では、さっきまでの紳士が打って変わって、飛びっきりセクシーで情熱的な男に変貌する。

 身体にじかに快楽を刻み込むようなセックスは、いつも大胆で恥ずかしくって…
なのに私を夢中にさせた。

 
「君は…何でもすぐに吸収するね」

 ある時彼が、枕語りに私を眺めて呟いた。
 さっきまでの情事の余韻がおさまらずに、トロリと彼を見つめたまま首を傾げると、彼は私の髪先を弄びながら微笑んだ。
 
「音楽でも本でも…仕事もそうだ。飲み込みが早くて、人一倍努力家」

 うっ…何だかハズカシイ。

 私は顔を赤らめて、慌ててそれを否定した。

「部長の教え方が上手いからだわ。私は別に…」

「謙遜は今や美徳じゃないよ。それと…」

 急に真顔にもどると、俯せていた私を自分の側に抱き寄せる。
「身体も」
「成瀬さ……う」
 
 信じられないくらい熱心な口付けが始まって、私は再び乱されていく…
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