大人の初恋
 そんな私が最初の思惑に反して、彼に嵌まり込んでいったのは、当然のことだったのかもしれない。


 …う~~~む。

 近頃の私、何だか変だ。

 成瀬部長のコトが、気になってしまって仕方がない。

 仕事でも、アキちゃんと彼が笑い合っているだけでモヤモヤと嫌な気持ちになる。
 そんな時は、決まってミスをやらかしてしまう。

 逢えない日にも気がつけば、彼のコトばかりを考えてしまっている。

 今夜も彼は、元の会社に呼ばれていて会えない。
 一人きりの部屋のベッドでゴロゴロしながら、ふと妙なことを思い出した。
 
 初めて寝た日に見た結婚指輪のことだ。
 彼が気を付けているのか、あれ以降は見たことないが……

 彼が未練を残している、と言っていた元の奥さん。

 どうして別れたんだろ?

『少しも本気じゃないみたい』
 と言われたんだって、出会った時に聞いたからよく覚えてる。

 いいじゃないの、贅沢だよね?
 だってさあ。
 一流の年収に容姿、最高のデートとセックスと、何を取っても極上の男だよ?

 まあ、確実に家庭が似合う男ではないから、その辺で何かあったのかもしれないけど。

 にしても勿体ないよね。
 ま、お陰で私に回ってきたワケだから、別にいいんだけどね。
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