大人の初恋
 私はその場に立ち尽くした。
 恥ずかしさでいっぱいになり、顔が熱くなった。

「ア、アキちゃんが…水谷サンがそう言ったんですか?」

「いいや、違う。
 君がいつまでも返事をくれないから、気になった彼女は何の気なしに杉原参事に聞いたんだ。……それでね。
 この件は、不正の可能性がある。後輩の水谷サンが懸命に見つけた。
なのに君は、それを放り投げていた」

 そんな。

「ば、罰って事ですか?わ、私だって今回は準備をしていて…」

 “そうじゃない”と彼は首を振った。

「君は。
 近頃ボンヤリしすぎている。少し頭を冷やしなさい、という意味だ。
 代わりは参事に頼んだからね」

 結局……罰じゃないか。

 屈辱にワナワナと身体が震えだす。

 アキちゃんの存在が急に憎らしく思えた。あの生意気な如月主任がね…と皆に嘲笑われる気がした。


 私が悪い。それは分かっている。
 なのにーー

 
 カッと頭に血が上った。
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