大人の初恋
 結局その遠征は大成果で終わったらしい。(この部では、不正を上げるコトを『成果』と呼ぶ)
 アキちゃんは一躍お手柄となった。

 彼女は時折、話しかけたそうにチラチラと私の顔色を伺っていたが、素っ気ない様子を見ると、寂しげに溜め息をついていた。
 私と彼女は、すっかり気まずくなってしまった。



  そして11月ーー
晩秋の木枯らしが肌寒い。

 私といえば不貞腐れて、ストライキを起こしている。
 すなわち、成瀬サンとの冷戦状態だ。

 私から連絡なんて、絶対にしてやんない。
 会社でも仕事の話以外、部長の事を避けている。

 向こうから詫びを入れてくるまでムシよムシ!

 
 だけど、2週間が過ぎても彼の方から連絡してくる事はなく、結局は私の方が根負けした。

 
………

 夜の10時。
 杉原参事がついさっき帰宅して、オフィスには、私と成瀬部長だけが残っている。


 私は人が来ないのを確認すると、無表情にパソコンを叩く彼の目の前、デスクにドンッと乗り上げた。

 これ見よがしに足を組む。

「…如月主任?」
 
 眉を潜め、怪訝そうに見上げた彼に、私は妖艶に笑んで見せる。
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