大人の初恋
「あ、あ、アキちゃん⁉」

 ひしっ。

 躊躇なく抱きついてきたアキちゃんに、ドキッとしてしまうやら、照れ臭いやらで……
 私は、ついに泣き出した彼女の後頭を撫でながら、心底可愛いと思った。
「……ぐすっ」
 
 ただし、バーバリーの一張羅にハナミズをつけられたのは、少々いただけなかったが。


 ようし、この調子で成瀬サンとも…


 しかしその日、成瀬部長はオフィスに姿を見せなかった。

「体調不良だそうです」

 電話連絡を受けたアキちゃんは、心なしかガックリとして有休の手続きを始めた。

 タイミング悪いなあ。

 ボンヤリとパソコン画面を眺めていた時、名案が浮かんだ。

 そうだ、『お見舞い』に行こう!

 ガタッ。

 イキナリ立ち上がった私に、おジイちゃん達がギョッとした。

「あ、スイマセン、スイマセン」
 謝りながら、ニヤケ笑いが止まらない。

 だって私、“カノジョ”だもの。

 カレシが調子悪いなら『看病』しに行ってしかるべき。
 その勢いで仲直りってことも…

 何よこれ、サイコーのタイミングじゃないの。
 アキちゃんとも上手くいったし、今日の私、何てツいてるんだろう。
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