大人の初恋
「だったらさ、繋いでみたら?諦め切れるまで。
 脈はあると思うんだ。
 君にだけだと思うよ?ヤツが奥さんの話したのは。
 アイツさあ。ええ格好しいの抱え込みタイプだもん。多分今日は、君に話して初めて泣けたんだ。
 探してみたら?君できそうなことを」


 私はガバッと起き上がった。

 リョウちゃんが片眉を上げ、ニッと笑ってキメてみせる。

「ま、もし淋しくなったら、いつでも店の2階のダブルベッドは空いて……うわっ」

「アリガトっ、リョウちゃん愛してる‼」

私は、思わず彼の首に抱きついた。頬にギュッと額を当てて、バッと離した。

「え、そ、そう?じゃあさっそく…あれ?」

 マルガリータを飲み干すと、私はカウンターに2千円を置いた。

「私、ガンバってみるから」
 
 大声で言うと、ポカンと見つめる彼を後に、大急ぎで立ち去った。

 去り際の背に、彼の喚き声を聞きながら。

「あ~~っ‼もうっ、俺ってば……」



 そうだ、まだ終わりじゃない。

 恋を知った。

 喪うことを知った。

 力になりたい。

 私はまだまだ、彼と私を繋ぎたい。
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