大人の初恋
「そうじゃなくて!
私は忘れる必要なんてないと思うんです。私だってちゃんと覚えてる。
お爺ちゃんとかお祖母ちゃん、小学校の時飼ってた犬…
成瀬部長に奥さんのコト、思い出して欲しいんです」
「もう…僕のことはほっといてくれないか。悪いけど、カウンセリングや説法なら一通り受けたんだし。
君が何に目覚めたのか知らないが、大事な時間をこんな男に時間をつかうべきじゃない」
あからさまな迷惑そうな顔つきに、つい泣きそうになる。
けれど私は今…必死だ。
縋(すが)られることにもあしらうことにも慣れた彼。
何でもいい。たとえ怒らせてでも。かれの琴線にさえ触れられるなら。
「大好きだった成瀬さんに忘れたられたら…
奥さんがすごく可哀想」
一瞬、彼の顔が歪んだ。
が、すぐに元のポーカーフェイスに戻る。
「バカをいうな。妻はもう」
「私が奥さんなら、絶対そう思います!
成瀬サンしか知らない二人の楽しかった思い出も、無かったことにされるなんて」
突き刺すような目線を感じる。
でも、私は負けない。
「月並みですが。
知ってる人が居なくなった時が、本当の死だと聞きました。
貴方は自分が辛いばっかりに、楽しかったことまで、奥さんの存在さえ無かったことになさろうとしてる」
私は忘れる必要なんてないと思うんです。私だってちゃんと覚えてる。
お爺ちゃんとかお祖母ちゃん、小学校の時飼ってた犬…
成瀬部長に奥さんのコト、思い出して欲しいんです」
「もう…僕のことはほっといてくれないか。悪いけど、カウンセリングや説法なら一通り受けたんだし。
君が何に目覚めたのか知らないが、大事な時間をこんな男に時間をつかうべきじゃない」
あからさまな迷惑そうな顔つきに、つい泣きそうになる。
けれど私は今…必死だ。
縋(すが)られることにもあしらうことにも慣れた彼。
何でもいい。たとえ怒らせてでも。かれの琴線にさえ触れられるなら。
「大好きだった成瀬さんに忘れたられたら…
奥さんがすごく可哀想」
一瞬、彼の顔が歪んだ。
が、すぐに元のポーカーフェイスに戻る。
「バカをいうな。妻はもう」
「私が奥さんなら、絶対そう思います!
成瀬サンしか知らない二人の楽しかった思い出も、無かったことにされるなんて」
突き刺すような目線を感じる。
でも、私は負けない。
「月並みですが。
知ってる人が居なくなった時が、本当の死だと聞きました。
貴方は自分が辛いばっかりに、楽しかったことまで、奥さんの存在さえ無かったことになさろうとしてる」