大人の初恋
「…ダメ。私が貰ったんだもん。私が返す」

「ちぇ、なんだよソレ…要らないなら貰っといてやろうと…イテっ」

 ペシンとその手を叩き、私は彼が今度来たら、連絡をして貰うように頼む。

「…まあいいか。サっちゃんのプライベートアドレス聞けたから」

 リョウちゃんは冗談を飛ばしながらも、それを引き受けてくれた。


 私は再度念押しをして、バーを後にした。
 フーっと熱い息を吐き、黒い夜空を見上げると、想わずニンマリと笑みが漏れる。

何故かって?そりゃあ…

 私にも、ちょっぴり生じた下心からに決まってる。

 酔った目には、とっても素敵なマスクに声、スタイルに見えた彼。
 鋭くチェックしたスーツ、時計は隠れたブランド品、しかも車はベンツのリッチな君(キミ)。

 もしかしたら、コレ…
 コレってさ。


 そう!カミサマが可哀想な私に与えてくれた、新しい出会いなのかも知れない‼

 出来れば彼とは今一度、あんな醜態ではなくて、バッチリキメた姿でお会いしたい…

 女子は強し。
 失恋したばかりの私の胸の内は、早くも次なる期待に膨らみはじめていた。

ふと見上ると、夜空に煌めく流星群。

 幸先ヨシ‼

 その日、まだ醒めきらぬ酔いに、持っていたバッグを振り回し、スキップしながら帰路についた……
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