大人の初恋
 考える間に、黒のキャミソールの下から素早く侵入しようとする手を、私はサッと止めた。
「ここじゃやだ!」
「なら部屋へ」
「きゃっ」

 悪戯に笑ったと思った瞬間、彼は私を横抱きに抱いた。

 30にもなって恥ずかしいったら!
 咄嗟に憎まれ口を叩いた。

「あ、あら。
 重たいのに無理すると身体に堪えますわよ、監査役?」

 私を見下ろした顔が、ニッと不敵に笑った。

「ほう。
 年寄り扱いが適切かどうか、今から試してみようじゃないか」

「バカなコト…んんっ」

 ベッドにフワリと横たえられると、時を置かずに、激しい口付けが始まった。

 キャミソールの下で、既に彼の指が這っている。繊細な指が左胸の突端にかかり、弧を描く。 

「イヤ…だ」
「そうは見えないね」

 私は、押し寄せるような快楽の波に抗うのをついに諦めた。

 チクショウ。
 
 悔し紛れに彼の背にギュウっと爪をたててやったが。

「躾のしがいがあることだ」

 額に汗の粒を浮かべて見下ろし、彼は妖艶に笑みを浮かべた。


 ああああ、シマッタ。

 これはもう……

 ゆっくり寝かせて貰えそうにない。
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