南くんの彼女 ( 七 転 八 起 ⁉︎ )
私はちゃんと嶋中くんに声をかけたはずなのに、私の手を握って歩き出したのは…
「せ、瀬那?!なんで…」
「ちょっと、南先輩!?」
間違いなく、南 瀬那。ご本人様だ。
「原野、参考書はソレ買えば問題ないと思う。
…それと嶋中、今日は佑麻のわがままに付き合わせたみたいで悪かったな。俺からも謝っておくよ。」
紗菜ちゃんへ参考書のアドバイスをしたかと思えば、私を引っ張って歩く足を止めた瀬那は、嶋中くんへと振り返った。
「何、急に彼氏ヅラ?…南は参考書選んでランチでも行けば?……責任もって俺が森坂 送ってくけど?」
嶋中くんは澄ました顔のまま、いつも通りに見えるけれど、その言葉の節々にトゲを感じるのは私だけかな。
瀬那と繋がれている左手に、瀬那がギュッと力を込めたのが分かって、急に胸がドキドキと加速する。
「コイツ俺のだから、その提案は断る。」
「っ、せ…瀬那?!」
涼しい顔して"俺のモノ"発言したかと思えば、そのままグイッと引き寄せられて、
「行くぞ。」
顔は熱を持って火が出るんじゃないかってくらい熱いし、繋がれた左手が心臓になったんじゃないの?ってくらい全身がドクンドクンと高鳴って、
もう、何が何だか分かんないけど、
「………うん!」
大丈夫、迷うことは何も無い。
私はただ、大好きなこの手を離さずに歩けばいい。