南くんの彼女 ( 七 転 八 起 ⁉︎ )
「…え、2人って…知り合い?」
俺と原野を交互に見ながら呆然とする悠太にズンズン近寄って行ったかと思えば
「お母さんがこれ、お裾分けだって。おばさんによろしくね!」
と、野菜の入ったビニール袋を押し付けた原野はクルッと振り返り、再び俺へと視線を向けた。
「…南先輩、少し話せますか?」
「ん、いいけど。」
別に、断る理由はない。
俺のど真ん中にはちゃんと佑麻がいて、アイツ以外に目移りする予定もなければ、2人を相手にする暇もない。
そもそもそんな器用じゃないし。
だから、俺がここで原野と2人きりになるのを拒む事の方が、よっぽど原野を意識してる事になる。
…ま、これは俺の勝手な解釈で佑麻が知ったらまた不安になるかもしれねぇけど。
今日、LINEしよう。
原野に会って2人で話したこと、ちゃんと佑麻に伝えればいい。そしたら、アイツの事だからきっと"ちゃんと教えてくれてありがとう"とか言いそうだな。
歩き出した原野を追うように歩き出せば、後ろで何やら悠太がうるさい。
「ちょ、2人でどこ行くんだよ!紗菜!」
「うるさいなぁ悠太は!また明日ね!」
「は?ちょ…まじかよ!」
原野は、実は本当に大事なやつが意外とすぐ側にいることに気付けてないだけかもな。