南くんの彼女 ( 七 転 八 起 ⁉︎ )
「…望むところだ。」
グイッと引き寄せられて、瀬那の腕の中に納まる私。
瀬那の匂いでいっぱいになって、もう頭がクラクラしてきちゃった。
瀬那がいることも、瀬那が私を好きでいてくれることも、当たり前なんかじゃない。
だから、こんなにも嬉しい。
「森坂…、最後に1回だけ抱きしめていい?」
「は?」
嶋中くんの言葉に『嫌だ』オーラ全開の瀬那。私を抱きしめる腕に自然と力が入るのが分かって、それにまたニヤけてる私って変態かな。
名残惜しさを感じながらも、瀬那の腕から抜け出す。もちろん瀬那は「は?」の顔だけど。
「…はい、どうぞ。」
嶋中くんには、たくさんたくさんお世話になったんだよ。
────────グイッ
「っ、ちゃんと幸せにしてもらえよ?」
「嶋中くん、本当に本当にありがとう!泣いてたら慰めてくれて、困ってたら助けてくれて、アドバイスくれて、私なんかを好きになってくれて、嶋中くんがいてくれて…本当に良かった。」
優しい腕の中。
瀬那とは違う匂いがする。
私を遠慮がちに抱きしめる嶋中くんに、ありがとうって気持ちを込めてギュッと抱きつく。
「おい、もういいだろ。」
そんな私たちを黙って見ていた瀬那が、シビレを切らして私を嶋中くんから引き剥がしたのは、それからすぐのこと。