君と過ごした日々
私にはお母さんがいない。
あまり記憶がないけど、本当に小さい頃、重い病気で亡くなったって聞いた。
小さい頃は、お母さんがいなくてさみしくて、夜は泣いていた記憶がある。
でも、ずっと疑問に思っていた事があるんだ。
お母さんの顔が思い出せなかった。
ふと口にだしたら何かが壊れる気がして、言い出せなかった。
どんなに記憶を探っても
どんなに思いおこそうとしても
どうしてか頭に浮かんでこなかった。
記憶を遮る半透明の壁が、邪魔をしている。
障害になるものが大きすぎて、越えられないんだ。
お父さんにこのことを言ったら、『だいぶ前の事だからなあー』って言ってたよね?
私、お母さんのことよく知らなくて…
数少ない貴重な写真を眺めても、他人と思ってしまった…。
身近にいないせいかもしれない。だけど、そんなの自分がひどすぎる。
誰よりも近くにいるはずの存在が、遠くに感じられるなんてそんな悲しい事が…。
あるなんて、嫌だった。