君と過ごした日々
こんな突拍子もない出来事、誰が信じると言うんだろう。だけど自分は、心の中では落ち着いているのかもしれない。
今まではっきりと思ったことはなくても。
いつか、こんな日がくるような気がしていたなんて、本当におかしい。
しばらくしてお父さんが顔をあげる。
精一杯、感情を圧し殺して。その顔をみて大きな声をあげて泣きそうになった。
「そんなことはないよ、奈都」
「でもどうしてお父さん、つらそうなの?私、私……知りたいの。何があったのか、何が起きようとしているのか」
落ち着いて、奈都とお父さんはいつものように優しく肩に手を置いた。
「奈都、話を聞いてくれ。このお寺には呪い――…が存在するんだろう。どういう因果でそうなったのはわからないが……」
「呪い――…私に関係するのかな?」
「わからない。でも、奈都は何も関係していないとは、はっきり言えないんだ。昔から続く、ある意味では連鎖なのかもしれない」
そう言って押し黙って考え込む。
―――呪い…なんて怖いんだろう。
誰からこの連鎖は始まったのだろうか。きっと創った人は、苦しみと憎しみを放って助けを求めていたの?
幽霊とか、そんなものはいるんだと思うが今の時代、呪いなんて信じていなかった。
あまりにも不確かで。
気づいたら肌に爪を食い込ませていた。