君と過ごした日々


家をぬけ、足は引き寄せられるようにして、蔵へと向かっていた。

もうあたりは暗くてぜんぜん見えなかった。地震の揺れでたくさんのものが倒れている。


進んでいく景色でそれだけのことしか見えない。何も、考えられない。



「はぁ、はぁ……ッ!」


もうここがどこだか分らなくなっていた。息は切れて肩で呼吸をしていた。



――すべての、始まりの場所。
今から踏み入れるような気がする。


「何でこんなとこに……?」


気がつけば、暗い蔵の中……


「誰、誰か、いるの……?」


周囲には散乱したものばかり。怪しげで、奇妙な、いつ訪れても、怖い場所。


「いやあぁ……!」


次第に、またガタガタと蔵が揺れはじめる。


「やだよ、誰か、助けて……!」


悲痛の声が蔵に響き渡る。

誰かから一心に見られているようで怖い。



ドンッッ!!!


はげしい音がして、鼓膜がやぶれそうになる。

恐怖でいっぱいになってその場で座りこんでしまった。耳をおさえてうずくまった。


だけど、でも。


近くに感じる、優しい存在は、分かる。

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