君と過ごした日々
もしかして映画の撮影かな?
演技にしても、なんと素晴らしいこと!
最近の映画予告では、戦争に関するテーマのものなんてあったかなあ、と記憶を探る。
あ、でもまだ今は撮影中か。なんか嬉しいな、ちょっと覗けて。
とにかく現実を逃避したくて、違う事を考えてみた。
ついぼうっとしていた。いや、本当に目の前の光景を疑いたかった。
「……うん、貴重な体験、だね」
はーと、嘆息した。
そのせいで、道から男の子が走ってきたのにも気づかなかった。
――ここから、全てがはじまろうとしていた。耕太くん、ここであなたと出逢ったのは、運命と呼んでもいいのでしょうか。
人が通らない裏通。
男の子の方も気づかなかったようだ。
後ろを振り返る間もなく、その男の子とまっこうの正面からぶつかってしまった。
それが耕太くんとのはじめての出会いだった。
「ぎゃあ!!」
な、なんて変な声……!
叫ぶなら女の子らしく「きゃあ」にすればよかったなんて、自分でも馬鹿らしく思った。
「痛ッ」
お互いドンッとしりもちもつく。
「何すんだよ!」
いきなり大声で叫ばれたから、びっくりして肩を動かす。
近距離で叫ばれたら誰だって驚くよ!