君と過ごした日々
それは、10月の晴れた日の午前のことだった。
まさか、誰がここから狂った歯車が回るなど、想像できただろうか。
「ない!ない!なーーい!!」
大きな声で騒いでいた。木製の家に、その声は大きく反響するかのように響いた。
「お父さんったらどこに入れたの!!」
西公寺 奈都(さいこうじ なと)。
このお寺の娘。
肩までの長い髪、すらっとした背、第一印象はほんわかした感じとよく言われる。
丸い顎は弧を描き、薄い唇は三日月の形をしている。
くりくりの瞳だね、と近所のおばあちゃんに頭を撫でられたから、この目は嫌いじゃない。
ガサゴソと音を鳴らして、お寺の蔵の中で何か探していた。
物が錯乱する中である物を頭に描きながら、どこに行ったか必死に思い出そうとしている。
まさか、自分の人生を大きく変える物に出逢うとも知らず。
――そして、ごそ、と大きなものが手にぶつかった。
「あれ?何だろう、これ…」
思わず呟いて首を傾げた。