100万回の祈りをキミに
朝のホームルームで先生が席替えは2学期までしない予定だからと話していた。
たぶん中学みたいにくじ引きで決めたりするんだろうけど叶うなら〝あの席〟に座りたいな、って思ったりして。
彼が座っていたあの席を見ながら姿を思い浮かべたいのに、なんでよりによって座っているのが夏井なのかな。
「――藍沢!」
1限目の授業は教室移動。その途中で後ろから名前を呼ばれた。
いや、呼ばれたというより叫ばれたのほうが正しい。ただでさえ廊下は響くのにみんな振り向いちゃってるし、呼ぶなら控えめにしてほしい。
「なに?」
もちろんそれは夏井だった。
「昨日は急にあんなこと言ってマジで悪かった」
さっきは言わされてるって感じだったけど、夏井は夏井なりに反省しているようだ。
「気にしてないって言ったでしょ」
「それならいいんだけど」
話は終わったはずなのに夏井はまだなにかを言いたそうだった。早く移動したいんだけどなぁ……。
「あのさ、またみんなで遊びにいく予定立ててんだ。だから藍沢も……」
「そういうの今後は誘わなくていいよ」
「え?」
「人が大勢いる場所って苦手なんだ」
クラスメイトたちがいい人だっていうのは分かったし、べつに学校以外の場所で交流を深めなくてもいいかなって思ってるから。
夏井は仕切ったりイベントを考えたりするのが好きそうだから早めにちゃんと断っておかないと。