100万回の祈りをキミに
私は言われたとおりスーパーに立ち寄って頼まれたものを買った。冷蔵庫の中を思い出して、これもないかも?あれもなかったかも?ってカゴに入れてたら、かなり袋が重くなってしまった。
はぁ……バス停まで戻るの大変かも。
そもそもお母さんが自転車で買いにいったほうが早くない?なんて思いながら歩いていると、聞き覚えのある声が。
『ったく。ボールの空気入れしたヤツ誰だよ。針が折れるとかどんだけ無理やり刺したの?』
駅前のスポーツ用品店から出てきたのは夏井だった。
電話をしながら、ブツブツと文句を言っている。もちろん夏井は私に気づいていない。
まさか私がこのバス停で降りてるなんて思ってないだろうし、夏井も降りる場所はここじゃないはず。
『空気針だろ?買ったよ。50本入り』
話を聞く限り夏井も誰かに用事を頼まれたらしい。
『は?今これで針が折れても大丈夫って言ったヤツだれ?つーか着いたら金請求するからな!』
夏井って外でも友達多そうだよね。
ひとりでいる時ってないし、あの適当な感じが逆に居心地よかったりするのかな。
『いやいや、肉まん買ってこいじゃねーよ。何人いると思ってんの?』
なんか毎日夏井の笑い声を聞いてる気がする。
だからといって耳が慣れてきたわけじゃないけど。
『バス来るのおせーから歩いていく。俺のスピードだと15分くらい?いや、肉まん買わねーって』
なんか悩みもないしバカだし人生楽しそう。
バス乗らないらしいし、これで鉢合わせしないで済む……ドクン。
夏井が去っていく後ろ姿に目を向けた瞬間、心臓が静かに音をたてた。