100万回の祈りをキミに
「そういうのやめれば」
キツい言い方をしたわけじゃなく、ただ自分の意見を言っただけなのに夏井の表情はまた不機嫌になった。
なんだか私に怒ってるように見えるし、本当になんなの。
不機嫌とか怒るとか、そもそもそんな間柄じゃないし。友達でもないしまだ学校が始まって2日目なのに馴れ馴れしいというか距離感が近いんだけど。
私の困惑した顔を見ると、夏井は慌ててまた表情を変えた。
「あ、いや……な、なんつーか輪に入らないと浮くじゃん。それに……」
やっぱりこの人は苦手だ。
夏井がどういう人なのかまだ知らないけど、昨日のことと今ので私とは合わない人ってことだけは分かった。
「そんなの夏井が気にしてくれなくていいよ。じゃあね」
私はそのままスタスタと廊下を歩き去った。
たまに、あれから波瑠はなにかが変わったねって言われるようになった。
そのなにかを具体的にみんな言わないけど、おそらくいい意味ではない。
ただ毎日を淡々とこなすだけの日々。
――『波瑠は強いね』
あれから何度その言葉を言われただろうか。
強さってなんだろう。
『まだ若いのにツラい経験をしたね』とか『私ならきっと立ち直れないよ』とかみんな同情してくれたけど、それを言われるたびにどんどん過去のものにされてる気がして苦しかった。
私が今までと変わらない生活を送っているように見えるのは、強いように見えるのは全部幻だよ。
私の幸せはあの瞬間で終わった。
これからもこの先も、彼以上の人なんてもう現れない。