100万回の祈りをキミに
「あ、ごめんごめん!そんなに驚かせるつもりはなかったんだけど」
「あ、亜紀……」
今ちょうど亜紀のことを考えてたから余計にビックリした、なんて言えない。
亜紀が1年生の階にいるなんて珍しい。しかもこの教室にいると不思議な感じ。
当たり前だけどやっぱり亜紀は同級生の男子とは違って、背は高いし、いるだけで存在感がある。
「なんでここに?」
「ああ、今あそこの部屋で面接の練習してて。自分の番が終わって、ふと見たら波瑠の姿が見えたから飛んできた」
あそこの部屋と指さしたのは渡り廊下を挟んだ向こう側の校舎の部屋。この教室からひとつ上の階で廊下からはこの場所が丸見えだ。
まさか見られていたとは知らず呑気に本なんて読んでいたけど……。
「波瑠の席ってここなんだ」
亜紀はそう言って隣の座席に座った。
……ドキッ。
亜紀が隣の席だったらこんな感じなんだ。
授業中の横顔や忘れ物の貸し借りなんかして、分からない問題は「どこ?」なんて教え合ったり。
同級生で同じクラスだったら、そんなこともできたのかなぁって、淡い想像をしてしまった。
「それで、なんの本読んでたの?」
わざとなのか無意識なのか亜紀は私に寄ってくる。
し、心臓の音が聞こえませんように……!