100万回の祈りをキミに
「あ、えっと……凪子に薦められて。でも活字は苦手というか読んでるつもりなんだけど実はまだ2ページしか読めてなくて」
面白いよって言われて興味はあるんだけど、なかなかページが進まない。
「もしかして波瑠って本を読むと眠くなるタイプ?」
「え、な、なんで分かるの?」
「ふ……あはは」
すると突然亜紀が笑いはじめた。
最近亜紀はよく笑う。
今まで笑ってなかったわけじゃないけど、ニコッと微笑むより口を開けて楽しそうに笑ってくれる。
出逢った頃よりは心を開いてくれてるのかな……
って勝手に自惚れているのは内緒。
「あ、亜紀ってたまに私のことバカだなぁって思ってるでしょ……?」
笑ってくれるのは嬉しいけど、そういう時は決まって亜紀が私のことをからかってる時だし。
「思ってないよ。波瑠は波瑠だなぁってホッとしてるだけ」
それはイコール、バカって意味じゃないのかな。まぁ、亜紀が楽しそうだから別になんだっていいけど。
「そうだ。この前の約束覚えてる?」
「亜紀の家に犬を見に行くって約束?」
「うん。いつにしようか?でもその前に犬が波瑠になつくように波瑠の話をいっぱいしとく」
亜紀のことを独り占めしたいって思うけど、それでこの関係が崩れてしまうなら、このままでもいいかなって思う。
だって亜紀の〝特別〟になれる椅子はひとつしかないから。