100万回の祈りをキミに




「昨日お父さんがノックもなしに部屋に入ってきてさ!」
 
次の日の朝。凪子は思春期特有のお父さんへの愚痴が止まらないらしく、学校に着いてからもずっと文句を言っていた。


「まぁまぁ。凪子のお父さんイケメンで優しいじゃん」

「どこが?波瑠イケメンの意味わかってる?」

そんな雑談をしながら自分の靴箱を開けた。するとパラッと足元に1枚の紙が落ちた。


「え、波瑠ラブレター?」

「まさか」


こんなメモ用紙がラブレターなはずがない。
軽い気持ちで紙を広げるとそこにはたったひと言〝消えろ〟という文字。

「なにこれ……?」とすぐに反応したのは凪子のほうだった。

私も嫌な文字を見てドキッとしたけど、すぐに書いた人が思い浮かんだからそこまで動揺はしなかった。


「ただのイタズラだよ。平気平気」

私はクシャッと紙を丸めて凪子に言った。


きっと書いた人は私を呼び出した先輩のだれかだと思う。

リーダー格の麗花先輩のような気もするけど、こんな幼稚なことするかな……。いや、私を呼び出した時のあの豹変した顔を見ちゃったからなんとも言えないけど。


……綾乃も影でこんな嫌がらせをされてたのかな。

でも誰にも言わなかった気持ちが分かる気がする。私もまた凪子に誤魔化しちゃったし。

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