100万回の祈りをキミに




それから数日が経って静かに授業を受けたいのに夏井のせいで私の席は騒がしい。


「こら夏井ー!また居眠りしてると進級できないからな」

授業によって先生は違うのに毎回同じことを言われて怒られている夏井がある意味すごい。


「ふぅあ……眠い」

大きなあくび。

休み時間は友達と騒いで授業中は机に顔を伏せて寝て、なにしに学校にきてるんだって感じ。

そんな夏井を呆れた顔で見ていると、目と目が合ってしまった。


「あとでノート見せてね」

ニカッと笑って夏井はまた机に伏せた。


あれから夏井と私の関係は変わらない。

凪子に夏井のことを言ったら「やっぱり私の思い過ごしじゃなかったんだ!」って驚いてた。

夏井は今も春風に所属してるらしい。

まだチームが活動していることは嬉しいけど、きっと二度と春風と関わることはない。

たくさんの思い出が詰まったあの場所やあの雰囲気は、私にとって見たくないものだから。


「藍沢さん。お菓子食べる?」

休み時間。安藤さんがチョコレートのクッキーを私にくれた。


「ここの席って先生から見えにくくていいよね。私なんて正面だから大変だよ」

私は前のほうが良かったよ。むしろ席替えする以前に戻りたい。


「あ、夏井もお菓子食べる?」

「おー食べる食べる」

安藤さんはまだ夏井のことが気になるのか、最近は自分から話しかけることが多くなった。

「夏井って好きな人とかいるのかな?」ってたまに聞かれるけど、なぜそれを私に聞くんだろうって感じ。

見た目で判断しちゃダメだけど夏井には恋愛の〝れ〟の字もなさそうだ。

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