100万回の祈りをキミに
そして学校が終わり家に帰るとなぜかバタバタとお母さんが慌ただしそうにしていた。
「あ、波瑠おかえり。ちょっと今からキヨさんのところに行くから夕飯は適当に食べてくれる?お父さんも帰りは遅いみたいだしコンビニ行くならお金置いとくから」
「……キヨさんどうかしたの?」
ひとり暮らしだし、たまに様子を見に行ってるのは知ってるけどこんなに急いでいくなんてただ事じゃない。
お母さんは電話台の上に置かれた家の鍵を持って、玄関で靴を履いた。
「なんか倒れちゃったみたいで」
「え!た、倒れたの?」
「一瞬だけクラッとね。今は意識あるらしいけどちょっと頭を打ったみたいで暫くは病院に入院するみたい」
「そうなんだ。心配だな……」
すると、玄関を開けようとしたお母さんの手が止まる。
「心配なら波瑠も行く?……北野台病院だけど」
――ドクンッと病院名を言われただけで記憶が蘇ってくる。
焦っちゃダメ。普通にしなきゃ。
ぜんぜん気にしてないし、行けるものなら行きたいけど勉強しないとなぁ、って顔を必死で作る。
「今日はやめとく」
ニコリと笑うとお母さんは安心したように家を出た。