100万回の祈りをキミに




「波瑠!」

今日は亜紀といつもの場所で待ち合わせ。その途中で亜紀に会って「待ち合わせ場所に行かずに会えちゃったね」と笑った。


「なんか今日の波瑠大人っぽい格好だね」

「そ、そう?」

いつも亜紀と会う時には可愛いワンピースや女の子っぽい服を選ぶけど今日は控えめ。だって……。


「うちまでの道順ってけっこう簡単でしょ?」

そう、犬を見に亜紀の家に行く日だから。

だって家だよ?亜紀の家だよ?

それだけだってガチガチに緊張してるのに、休日だしお母さんやお父さんがいたら今度こそちゃんと挨拶するんだ。

昨日の夜いっぱい練習したし、きっと噛まずに言えるはず!


亜紀の家は閑静な住宅街にあって、白い外観に緑色の屋根。

なんか可愛い家だなぁ。亜紀がここで暮らして、ここで育ったかと思うとなんだか拝みたくなるほど感激してしまった。


「なんかカブみたいでしょ?」

「え?カブ?」

「うん。緑の屋根に白い家だから」

亜紀はそう笑って家の前の門を開けた。

カブじゃなくて大根でもいいんじゃ……いや、そんなことを考えてる場合じゃなくて。

ちょっと亜紀の言葉に和んでしまったけど、もう私は亜紀の家の敷地に足を踏み入れている。


あ、もうすぐ鍵を開けちゃう……。

えっとまずは名前を名乗って、それから学校とクラス名も……あれ、クラスは言う必要ないよね?

急に頭が真っ白になって昨日練習したものが一気に飛んでしまった。

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