100万回の祈りをキミに
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その日の夜。私はお母さんに凪子と会うと嘘をついて家を出た。だってさすがにこの時間に亜紀に会うとは言えないし。
亜紀は危ないからと近所まで迎えにきてくれて、着いたのはまさかの学校。
「な、なんでここ?」
当たり前だけど門は閉じられていて人の声も一切しない。
「1回でいいから忍びこんでみたかったんだよね」
「忍びこむ?中に入るの?」
夜の学校は昼間と違ってすごく不気味で、窓から人体模型が覗いてたら……とか、すすり泣く声が聞こえてきたら……とか想像しただけで寒気がする。
私がそんなことを考えてる間に亜紀は門を簡単に飛び越えて、すでに敷地内にいた。
「波瑠おいで」
亜紀にそう言われたら行くしかない。……というか、このままここに立ってるのも怖いし。
亜紀の力を借りて門を越えた私はずっと背中を丸めて亜紀の服を掴んでいた。
どこに行くのかと思えば亜紀は1階の西側の窓をスッと開けて、さらに校内に入ろうとしていた。
「鍵開けておいたんだ」
「さ、さすがにマズイよ。怒られるよ」
「俺卒業しちゃったし」
なんだか亜紀は楽しそうで私は「もう……!」と言いながら、そのあとを追った。
見つかって私が怒られたら全部亜紀のせいにするからね。